第3章 行政法 入門〜基本 頻出・区別が大事

行政立法・行政指導

役所が作るルールと、お願いベースの“行政指導”。

📖 このページでわかること

  1. 役所がルールを作る「行政立法」とは何か
  2. 国民を拘束する「法規命令」(委任命令・執行命令)と委任の限界
  3. 内部基準にすぎない「行政規則」(裁量基準・解釈基準・通達)の役割
  4. 強制ではない“お願い”である「行政指導」のルール(行政手続法)
  5. 行政指導に従わなくても不利益な扱いを受けない、という大原則
  6. 役所が将来の計画を立てる「行政計画」のあらまし
法律は国会が作りますが、こまかいルールまで全部は決めきれません。そこで役所が細部のルールを作るしくみがあります。これが「行政立法」です。そして役所がする“お願い”が「行政指導」。どちらも実務でよく出てきますし、試験でも区別がよく問われます。一つずつ、ていねいに整理していきましょう。

1. そもそも「行政立法」って何?

法律は国会が作ります。けれども、世の中のこまかい事情まで法律ですべて書ききるのは無理があります。そこで、法律の中身を補うために行政(役所)がルールを作ることが認められています。これを行政立法といいます。

たとえば「○○について必要な事項は、政令で定める」と法律に書いておき、こまかい部分を内閣が「政令」という形で定める、というやり方です。政令は内閣、省令は各省の大臣が定めるルール、というイメージを持っておきましょう。

たとえ話:おおまかな校則と、こまかい運用ルール

学校の「校則」が法律だとすると、「校則の細かい運用方法を、各クラスの先生が決める」のが行政立法のイメージです。校則そのものは生徒会(国会)が作りますが、こまかい部分は先生(役所)にまかせる。ただし先生が勝手に校則を超えるルールは作れません。あくまで校則の範囲内で、です。

2. 行政立法は2種類ある

行政立法は、国民を拘束するかどうかで大きく2つに分かれます。ここが最大のポイントです。

① 法規命令 ── 国民を拘束する

法規命令は、国民の権利義務に関わるルールで、国民を直接しばる力を持ちます。政令・省令などがこれにあたります。国民をしばる以上、必ず法律の根拠が必要です。法規命令はさらに2つに分かれます。

② 行政規則 ── 原則として外部を拘束しない

行政規則は、役所の内部での取り決めです。役所が仕事をするうえでの基準や指針であって、原則として国民を直接しばりません。法律の根拠がなくても定められます。次のようなものが行政規則にあたります。

これだけ覚える:分かれ目は「国民をしばるか」

法規命令=国民をしばる(だから法律の根拠が必要)
行政規則=役所の内部ルール(原則として国民をしばらない・法律の根拠は不要)

法規命令行政規則
国民を拘束するか拘束する原則しない(内部基準)
法律の根拠必要不要
中身委任命令/執行命令裁量基準・解釈基準・通達など
イメージ政令・省令役所内のマニュアル

3. 委任命令には「限界」がある

委任命令は、法律から委任を受けて新しい権利義務を定められる、強い力を持つものです。だからこそ、委任には限界があります。試験でも問われやすい大事な論点です。

たとえ話:お使いのメモ

親に「これで買い物してきて」とお金を渡されたとき、「夕飯の材料を買ってきて」と言われていれば、その範囲で選べます。でも「全部おまかせ」とだけ言われて、自分のほしいお菓子を買ってきたら怒られますよね。委任命令も同じで、委任された目的の範囲を超えてはいけないのです。「全部おまかせ」という白紙委任そのものが、そもそも許されません。

注意:委任命令と執行命令の違い

同じ法規命令でも、委任命令は「新しい権利義務の中身」まで定められるのに対し、執行命令は「実行のための手続・細目」しか定められません。執行命令で国民に新しい義務を課すことはできない、と区別しておきましょう。

4. 行政規則の合理性が問題になる場面

行政規則は「原則として国民を拘束しない」のが建前です。けれども、裁量基準(審査基準・処分基準)のように、役所がそれにしたがって処分をする場合、その基準の合理性が裁判で問題になることがあります。

たとえば、定めた基準が著しく不合理だったり、合理的な理由なく基準を無視して特定の人だけ別扱いしたりすると、平等原則の観点から処分が違法とされることがあります。「内部基準だから外には一切関係ない」と単純に割り切れない場面がある、と知っておきましょう。

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5. 行政指導 ── 強制ではない“お願い”

ここからは行政指導です。行政指導とは、役所が国民に対して「こうしてください」とお願いやアドバイスをすることです。指導・勧告・助言などと呼ばれますが、いちばん大事な性質はこれです。

行政指導の本質:相手の「任意の協力」に基づく

行政指導は強制力がありません。あくまで相手が自分から協力してくれることを前提とした“お願い”です。命令ではないので、従う・従わないは国民の自由です。

たとえ話:先生からの「お願い」

先生が「ろうかは走らないでね」と声をかける——これは命令というよりお願いです。従ってほしいけれど、無理やり止めることはできません。行政指導もこれと同じで、役所が「こうしてくれませんか」と協力を求めるだけ。聞くかどうかは相手しだいなのです。

6. 行政指導の大事なルール(行政手続法32〜36条)

行政指導には「お願いだから何でもアリ」では困るので、行政手続法がルールを定めています。試験で問われる大事なポイントを整理しましょう。

行政手続法32条(行政指導の一般原則)の要点

行政指導は、その役所の任務・所掌事務の範囲内でしか行えず、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものでなければならない。そして、行政指導に従わなかったことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない

ルール内容
任意の協力(32条)相手方の任意の協力によってのみ実現される。従わないことを理由とする不利益取扱いは禁止
趣旨・内容・責任者の明示(35条)行政指導をするときは、その趣旨・内容・責任者を相手方にはっきり示す
書面の交付請求(35条)口頭で行政指導をした場合、相手方から求めがあれば原則として書面を交付する
申請に関連する指導(33条)申請を取り下げさせよう・内容を変えさせようとする指導で、相手が従う意思がないのに指導を続けて申請の処理を妨げてはならない
許認可権限を背景とする指導(34条)権限を行使できない・行使する意思がないのに、それをちらつかせて従わせるような指導をしてはならない
中止等の求め(36条の2)法律の要件に適合しない行政指導を受けた者は、その中止などを求めることができる
注意:従わなかったことを理由にした不利益は×

ここは正誤問題で頻出です。行政指導は任意の協力が前提なので、従わなかったからといって、それを理由に不利益な扱いをしてはいけません。「言うことを聞かないなら許可を出さない」といった対応は許されません。お願いを断ったことで罰せられるなら、それはもう“お願い”ではなくなってしまうからです。

具体例:書面交付請求のしくみ

役所の担当者から口頭で「営業のやり方を改めてほしい」と指導されたとき、相手方は「では、その趣旨と内容、担当責任者を書面でください」と求めることができます。役所は原則これに応じなければなりません。「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、後で争えるようにするためのしくみです。

7. 行政計画 ── 役所が立てる将来の計画

役所は将来の目標と、それを実現する手段をまとめた行政計画も作ります。都市計画などがその例です。計画には、国民をしばる拘束的計画と、目標を示すだけで直接はしばらない非拘束的計画があります。

これだけ覚える:計画には広い裁量、でも信頼保護もある

計画づくりには計画裁量という広い裁量がある。一方で、計画を信じた国民の信頼を裏切れば計画担保責任が問題になる。「広い裁量」と「信頼保護」の両面がある、とセットで押さえましょう。

演習過去問チャレンジ(○×)

Q1.行政規則は役所の内部基準にすぎないが、国民の権利義務を直接拘束する効力を持つ。

正解は ×行政規則は役所の内部での取り決めであり、原則として国民を直接拘束しません。国民を拘束するのは法規命令のほうです。

Q2.行政指導は相手方の任意の協力によって実現されるものであり、行政機関はこれに従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならない。

正解は 。行政指導は任意の協力が前提で、従わなかったことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(行政手続法32条)。

Q3.法律を執行するための手続的な細目を定める執行命令は、法律の委任があれば、国民に新たな義務を課すこともできる。

正解は ×執行命令は実行のための手続・細目を定めるだけで、新たな権利義務を作ることはできません。新しい義務の中身を定められるのは委任命令です。

Q4.法律が政令に対して何を委任したのか定めず、すべてを白紙で委任することは許されない。

正解は 白紙委任は禁止されます。委任するなら、何をどこまで委任するのかをある程度はっきり示す必要があります。

Q5.口頭で行政指導をした場合、その相手方から書面の交付を求められたときは、行政機関は原則としてこれを交付しなければならない。

正解は 。口頭の行政指導について相手方から求めがあれば、行政指導の趣旨・内容・責任者を記した書面を原則交付します(行政手続法35条)。

Q6.委任命令の内容は、もとの法律が委任した趣旨や目的を超えていても、政令で定めた以上は当然に有効である。

正解は ×。委任命令は委任の趣旨・目的の範囲内でなければならず、これを超える部分は無効になり得ます。

Q7.法律の要件に適合しない行政指導を受けた者は、その行政指導の中止などを求めることができる。

正解は 。要件に適合しない行政指導については、相手方が中止等の求めをすることができます(行政手続法36条の2)。

暗記一問一答
法規命令と行政規則の分かれ目は?
A. 国民を拘束するか。法規命令は拘束する(法律の根拠が必要)、行政規則は原則拘束しない内部基準。
法規命令の2種類は?
A. 委任命令(新たな権利義務の中身を定める)と執行命令(実行のための手続・細目を定める)。
委任命令の限界は?
A. 白紙委任は禁止。委任命令の中身は委任の趣旨・目的の範囲内でなければならない。
行政規則の具体例は?
A. 裁量基準(審査基準・処分基準)、解釈基準、通達など。
行政指導のいちばんの特徴は?
A. 強制力がなく、相手方の任意の協力に基づくこと。
行政指導に従わなかったらどうなる?
A. 従わなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはならない(行政手続法32条)。
行政指導で明示すべきことは?
A. 行政指導の趣旨・内容・責任者(行政手続法35条)。口頭なら書面交付を求められる。
許認可権限を背景とする指導の注意点は?
A. 権限を行使できない・する意思がないのに、それをちらつかせて従わせてはならない
計画裁量と計画担保責任とは?
A. 計画づくりの広い裁量が計画裁量/計画を信じた国民の信頼を裏切った責任が計画担保責任。

📌 このページのまとめ

  • 行政立法=役所が法律を補ってルールを作ること
  • 法規命令は国民を拘束し法律の根拠が必要(委任命令・執行命令)
  • 委任命令には白紙委任の禁止・委任の趣旨の範囲内という限界がある
  • 行政規則は内部基準(裁量基準・解釈基準・通達)で、原則として国民を拘束しない
  • 行政指導は強制ではなく、相手方の任意の協力に基づく“お願い”
  • 従わなかったことを理由とする不利益取扱いは禁止。趣旨・内容・責任者を明示し、口頭なら書面交付
  • 行政計画には計画裁量という広い裁量と、計画担保責任という信頼保護の両面がある