📖 このページでわかること
- 婚姻の要件・無効と取消し・効果(同居協力扶助・日常家事債務の連帯責任)
- 離婚のしくみ(協議離婚・裁判離婚)と財産分与・親権者指定・面会交流
- 実子(嫡出推定・嫡出否認・認知)と養子(普通養子・特別養子)の違い
- 親権(身上監護・財産管理・利益相反)と扶養
1. 家族のルールも法律で決まっている
「親族法」は、結婚・離婚・親子・親権など、家族をめぐる関係を定めた分野です。日々の暮らしに身近なテーマなので、たとえ話と結びつけるとスッと頭に入ります。なお親族とは、6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族を指します。
スポーツにルールがあるように、家族にも法律というルールがあります。「いつ結婚が成立するのか」「夫婦が買い物でつくった借金は誰が払うのか」「子どもは誰が育てるのか」——こうした場面を、民法がきちんと用意しているのです。
2. 婚姻(結婚)の要件
結婚が法律上有効に成立するには、いくつかの条件(婚姻の要件)を満たす必要があります。実質的要件(中身)と形式的要件(届出)に分けて押さえます。
- 婚姻意思があること:当事者の二人に、本当に夫婦になろうという意思があること(実質的要件)
- 婚姻適齢に達していること:男女とも18歳になっていること
- 重婚でないこと:すでに配偶者がいる人は、重ねて結婚できません
- 近すぎる親族でないこと:一定の近親者どうしの結婚は禁止
- 婚姻の届出をすること:役所に届け出ることで成立します(届出主義・形式的要件)
2022年4月から、成年年齢が18歳になったのにあわせて、婚姻適齢も男女とも18歳に統一されました。現在は18歳になれば、親の同意がなくても結婚できるのがポイントです。
結婚式を挙げただけでは、法律上はまだ夫婦になりません。二人の「夫婦になろう」という気持ちと、役所への届出がそろって、はじめて法律上の結婚が成立します。式は法律上の要件ではない、ということです。
3. 婚姻の無効と取消し
要件に欠けがあると、婚姻は無効になったり、取り消せることになったりします。両者は区別して問われます。
| 無効になる場合 | 取り消せる場合 | |
|---|---|---|
| おもな原因 | 婚姻意思がないとき/届出がないとき | 婚姻適齢違反・重婚・近親婚など/詐欺・強迫 |
| 効力 | はじめから効力なし | 取り消されるまでは有効 |
一般の法律行為の取消しは「はじめにさかのぼって(遡及的に)」無効になりますが、婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じます。すでに生じた夫婦・親子関係を一気にさかのぼって覆すと、子の身分などが不安定になるからです。
4. 婚姻の効果
結婚すると、夫婦の間にさまざまな権利義務が生まれます。試験でよく問われるのが次の点です。
① 同居・協力・扶助の義務
夫婦はお互いに同居し、協力し、助け合う義務を負います。一緒に暮らし、支え合うのが基本です。
② 夫婦間の契約取消権
婚姻中、夫婦間でした契約は、婚姻中はいつでも一方から取り消せるのが原則です(ただし第三者の権利を害することはできません)。
③ 日常家事債務の連帯責任
夫婦の一方が、日常の家庭生活に必要な範囲でつくった借金(債務)については、もう一方も連帯して責任を負います。
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他方は、これによって生じた債務について連帯して責任を負う。
妻が日々の食料品や生活用品をツケ(後払い)で買った場合、その代金は夫も一緒に支払う責任を負います。
一方で、夫婦の一方が個人的な趣味で高額な品を勝手に買ったような場合は、「日常家事」の範囲を超えるため、連帯責任にはなりません。
連帯責任になるのは、あくまで「日常の家事」に必要な範囲の債務だけです。事業用の多額の借金などは含まれません。「日常家事」の線引きが問われます。
5. 離婚のしくみ
結婚に入口があるように、離婚という出口にもルールがあります。代表的なのは次の2つです。
| 種類 | どんな離婚か | ポイント |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦の話し合いで合意し、届け出る離婚 | 合意があれば理由は不要 |
| 裁判離婚 | 合意できないとき、裁判所に離婚を求める離婚 | 法律で定める離婚原因が必要 |
もっとも多いのは、夫婦の合意による協議離婚です。話し合いでまとまらないときに、調停を経て、最終手段として裁判離婚になります(家庭裁判所では調停前置がとられます)。裁判離婚の原因には、不貞行為・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復しがたい強度の精神病、その他婚姻を継続しがたい重大な事由があります。
離婚にともなって決めること
- 財産分与:婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚にあたって清算・分配する
- 親権者の指定:未成年の子がいる場合、父母のどちらを親権者とするかを決めなければ協議離婚の届出はできない
- 面会交流・養育費:子と別居親との面会交流や、子の監護に要する費用の分担を取り決める
未成年の子がいる夫婦が協議離婚をするときは、必ず一方を親権者と定めなければ離婚届を出せません。子の養育に空白が生じないようにするためです。
6. 実子(嫡出推定・嫡出否認・認知)
① 嫡出推定
婚姻中の妻が産んだ子は、原則として夫の子と推定されます。これを嫡出推定といい、生まれた子の父をすばやく確定して、子の身分を安定させるためのしくみです。
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。また、婚姻の成立後に生まれた子なども、夫の子と推定される。
「結婚している夫婦の子は、夫の子」と最初から推定しておけば、子どもが生まれるたびに父親を一から証明する必要がありません。子の立場をすばやく安定させるための“目印”のようなものです。
② 嫡出否認
推定された父子関係を否定するには、原則として嫡出否認の訴えによらなければなりません。これは一般的な親子関係を覆す手続きより厳しく制限されており、提訴できる者や期間が限られています。子の身分の安定を重視するためです。
③ 認知
結婚していない男女の間に生まれた子(嫡出でない子)について、父が自分の子と認めることを認知といいます。認知によって、法律上の父子関係が生じます。父が任意に認知しない場合は、子などが認知の訴えを起こすことができます。認知の効力は子の出生の時にさかのぼって生じます。
7. 養子(普通養子・特別養子)
子には、血のつながった実子と、法律上の手続きで親子になる養子があります。養子には2つのタイプがあり、両者の違いは頻出です。
| 普通養子 | 特別養子 | |
|---|---|---|
| 実の親との関係 | 残る | なくなる(断ち切る) |
| おもな目的 | 家の継承など幅広い | 子の福祉(育ての家庭に) |
| 成立のさせ方 | 当事者の届出が基本 | 家庭裁判所の審判が必要 |
| 子の年齢 | とくに上限なし | 原則として一定の年齢未満(幼い子が対象) |
| 離縁 | 原則として協議で可 | 原則として認められにくい |
ざっくり言えば、普通養子は実の親とのつながりが残るタイプ、特別養子は実の親とのつながりを切って、新しい家庭の子として育てるためのタイプ、と押さえれば十分です。
未成年者を普通養子にするには、原則として家庭裁判所の許可が必要です(自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合などは例外)。子を食い物にする縁組を防ぐためです。
8. 親権
親権とは、未成年の子を養い育て、その財産を管理するために親に与えられる権利・義務です。子のために行使するものであり、親の身勝手のためのものではありません。婚姻中は、原則として父母が共同して親権を行使します。
親権の中身は、大きく2つに分かれます。
- 身上監護:子のしつけ・養育・居所の指定など、子の身の回りの世話
- 財産管理:子の財産を管理し、財産に関する法律行為について子を代表する(法定代理)
親権は子の利益のためのもの。婚姻中は父母の共同が原則で、子の身上の監護(しつけ・養育)と財産の管理の両面を含みます。
利益相反行為
親権を行う者と子の利益が相反する行為については、親権者は子のためにその利益相反行為をすることができず、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならない。
親が自分の借金のために、子の不動産に担保を設定するような場合は、親と子の利益がぶつかります(利益相反行為)。このとき親は子を代理できず、家庭裁判所が選任する特別代理人が子のために手続きをします。子の利益が親に食われないようにするしくみです。
9. 扶養
扶養とは、自分の力だけでは生活できない親族を、ほかの親族が経済的に支えることです。直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務を負うのが原則です(特別の事情があるときは、家庭裁判所が3親等内の親族間にも扶養義務を負わせることがあります)。だれが・どの程度扶養するかは、当事者の協議で定め、まとまらないときは家庭裁判所が定めます。
Q1.現在の民法では、婚姻することができる年齢(婚姻適齢)は、男女とも18歳である。
正解は 〇。成年年齢が18歳になったのにあわせ、婚姻適齢も男女とも18歳に統一されました。18歳になれば親の同意なく結婚できます。
Q2.夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と負った債務については、原則として他方も連帯して責任を負う。
正解は 〇。これが日常家事債務の連帯責任(761条)です。ただし連帯になるのは「日常の家事」の範囲に限られる点に注意します。
Q3.特別養子縁組が成立しても、養子と実の親(実方)との親族関係は、当然には消滅しない。
正解は ×。特別養子では、実の親との親族関係は原則として消滅します。実親との関係が残るのは普通養子のほうです。
Q4.特別養子縁組は、当事者の届出だけでは成立せず、家庭裁判所の審判によって成立する。
正解は 〇。特別養子縁組は家庭裁判所の審判によって成立します。当事者の届出で足りるのは普通養子のほうです。
Q5.親権者とその子との利益が相反する行為については、親権者は子を代理できず、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならない。
正解は 〇。利益相反行為では、親権者は子を代理できず、家庭裁判所が選任する特別代理人が子のために行為します(826条)。子の利益を守るためのしくみです。
Q6.婚姻が取り消された場合、その婚姻ははじめにさかのぼって無効となる。
正解は ×。婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じます。一般の取消しのようにさかのぼりません。すでに生じた身分関係を安定させるためです。
Q7.未成年の子がいる夫婦が協議離婚をするには、その協議で一方を親権者と定めなければならない。
正解は 〇。未成年の子がいる協議離婚では、父母の一方を親権者と定めなければ離婚届を出せません。子の養育に空白を生じさせないためです。
Q8.嫡出でない子に対する父の認知は、子の出生の時にさかのぼってその効力を生じる。
正解は 〇。認知の効力は子の出生時にさかのぼって生じます。これにより、出生時から父子関係があったものとして扱われます。
現在の婚姻適齢は何歳?
婚姻が「無効」になる主な原因は?
婚姻の取消しの効力は?
日常家事債務の責任はどうなる?
協議離婚と裁判離婚の違いは?
未成年の子がいる協議離婚で必須のことは?
嫡出推定とは?
認知の効力はいつから?
普通養子と特別養子の最大の違いは?
利益相反行為では誰が子を代理する?
📌 このページのまとめ
- 婚姻には婚姻意思・適齢(男女とも18歳)・重婚でない・届出などが必要。意思がなければ無効、適齢違反などは取消し(将来効)
- 婚姻の効果として同居協力扶助義務と日常家事債務の連帯責任(761条)がある
- 離婚は協議離婚(合意)が基本、まとまらなければ裁判離婚(離婚原因が必要)。未成年の子がいれば親権者の指定が必須
- 婚姻中の妻の子は原則夫の子と推定(嫡出推定・772条)。否認は厳しく制限。認知は出生時にさかのぼる
- 養子は普通養子(実親との関係が残る・届出)と特別養子(実親との関係が切れる・家裁の審判)
- 親権は子の利益のためのもの。婚姻中は父母の共同が原則で、身上監護と財産管理を含む
- 親子の利益相反行為では特別代理人が必要(826条)。直系血族・兄弟姉妹は互いに扶養義務