第1章 民法 入門〜基本 頻出・表で整理

相続

だれが・どれだけ受け継ぐ? 法定相続・遺言・遺留分を整理します。

📖 このページでわかること

  1. 相続人の範囲と順位・法定相続分・代襲相続
  2. 相続できなくなるしくみ(相続欠格・廃除)
  3. 承認・放棄(単純・限定・放棄、熟慮期間3か月)と遺産分割
  4. 遺言の方式と撤回、遺留分侵害額請求、配偶者居住権
人が亡くなると、その人の財産は家族などに引き継がれます。これが相続です。「だれが」「どれだけ」受け継ぐのかには、きちんとした順番とルールがあります。試験では、相続分の計算・遺留分・遺言の方式・配偶者居住権が頻出です。順に整理していきましょう。

1. 相続とは──遺産の分け方

亡くなった人(被相続人)の財産を、家族など(相続人)が受け継ぐことを相続といいます。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も受け継ぐのがポイントです。

たとえ話:荷物ごと受け取る引き継ぎ

相続は、亡くなった人が持っていた財産という荷物を、次の世代がまとめて受け取る引き継ぎのようなものです。ただし受け取るのは良い荷物だけではありません。借金というマイナスの荷物も一緒に渡ってくることがある、という点に注意しましょう。

2. だれが相続人になる?(範囲と順位)

相続人になれる人と、その順番は法律で決まっています。まず大原則を押さえます。

これだけ覚える:配偶者は常に相続人

配偶者(夫・妻)は、いつでも必ず相続人になります。そのうえで、配偶者と一緒に、次の順位で相続人が決まります。
第1順位=子第2順位=直系尊属(父母など)第3順位=兄弟姉妹

順位が上の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。たとえば子がいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になれない、ということです。

順位相続人ポイント
常に配偶者いれば必ず相続人
第1順位いれば父母・兄弟姉妹は相続しない
第2順位直系尊属(父母など)子がいないときに相続人
第3順位兄弟姉妹子も直系尊属もいないとき
注意:内縁の配偶者・離婚した元配偶者は相続人ではない

相続人になるのは法律上の配偶者(婚姻届を出した夫・妻)だけです。籍を入れていない内縁の妻や、離婚した元配偶者は相続人になりません。一方、養子や認知された子は、実子と同じく第1順位の相続人になります。

3. どれだけ受け継ぐ?(法定相続分)

遺言がない場合、だれがどれだけ受け継ぐかの目安が法定相続分です。だれと一緒に相続するかで、配偶者の取り分が変わります。

相続人の組み合わせ配偶者もう一方
配偶者と1/2子で1/2を分ける
配偶者と直系尊属2/3直系尊属で1/3を分ける
配偶者と兄弟姉妹3/4兄弟姉妹で1/4を分ける
具体例

夫が亡くなり、妻と子ども2人が相続人の場合。
→ 妻が1/2。残りの1/2を子ども2人で分けるので、子は1人あたり1/4ずつになります。

注意:相手が誰かで配偶者の取り分が変わる

配偶者の取り分は、組み合わせによって1/2 → 2/3 → 3/4と変わります。「子と→1/2」「直系尊属と→2/3」「兄弟姉妹と→3/4」をセットで覚えるのが近道です。なお、子や兄弟姉妹が複数いるときは、原則として同じ順位の者どうしは頭数で均等に分けます。

4. 代襲相続

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった子などが、被相続人より先に亡くなっていた場合などに、その子(被相続人から見れば孫)が代わりに相続することです。相続欠格・廃除によって相続権を失った場合も代襲が起こりますが、相続放棄では代襲は起こりません

たとえ話:次の走者が引き継ぐ

本来引き継ぐはずの子がいなくなっても、引き継ぎは止まりません。その子の子(孫)が代わりに荷物を受け取る——これが代襲相続のイメージです。

注意:子の代襲は孫・ひ孫へ続くが、兄弟姉妹は一代限り

子が相続人の場合、代襲は孫・ひ孫へと下にどんどん続きます(再代襲あり)。これに対し、兄弟姉妹が相続人の場合の代襲は、その子(甥・姪)の一代限りで、それより下には及びません。ここはひっかけで狙われます。

5. 相続できなくなるしくみ(欠格・廃除)

相続人になれるはずの人でも、一定の事情があると相続権を失います。代表が相続欠格廃除です。

相続欠格廃除
どんな場合被相続人を殺害した・遺言を偽造したなど重大な非行被相続人に対する虐待・重大な侮辱など
効果が生じるしかた一定の事由があれば当然に相続権を失う被相続人が家庭裁判所に請求して認められる
代襲代襲は起こる代襲は起こる

欠格は法律上当然に効果が生じるのに対し、廃除は被相続人の意思にもとづいて家庭裁判所が判断する点が違います。どちらも、その人の子による代襲相続は起こるのがポイントです。

- スポンサーリンク -
広告スペース

6. 受け継ぐ?断る?(承認・放棄)

相続は、借金まで受け継ぐことがあるため、受け継ぐかどうかを選ぶことができます。選び方は3つです。

選択内容
単純承認プラスもマイナスもすべて受け継ぐ
限定承認プラスの財産の範囲でだけマイナスを引き受ける(相続人全員で共同して行う)
放棄はじめから相続人でなかったことになる(受け継がない・単独でできる)
これだけ覚える:熟慮期間は3か月

限定承認や放棄をするには、自分が相続人になったことを知ったときから原則3か月以内に、家庭裁判所で手続きをする必要があります。この期間を熟慮期間といいます。何もしないまま3か月が過ぎると、原則単純承認したものとして扱われます(法定単純承認)。

注意:限定承認は「全員で」、放棄は「単独で」

限定承認は、相続人全員が共同して家庭裁判所に申述しなければできません。一方、相続放棄は各相続人が単独でできます。また、放棄をした人の子による代襲は起こらない点も再確認しておきましょう。

7. 遺産分割

相続人が複数いると、遺産はいったん相続人全員の共有になります。これをだれが何を取るか具体的に決めるのが遺産分割です。まずは相続人全員の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判によります。被相続人が遺言で分割方法を指定したり、一定期間分割を禁止したりすることもできます。

遺産分割の効力はさかのぼる

遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生じます。つまり、分割で取得した財産は、被相続人が亡くなった時点から自分のものだったように扱われます(ただし第三者の権利を害することはできません)。

8. 遺言(いごん)

遺言は、自分の財産を「だれにどう残すか」を、生前に自分の意思で決めておくものです。満15歳に達した者は遺言ができます。普通方式の遺言には次の3つがあります。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作り方本人が全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録は自書でなくてもよい)公証人が筆記して作成内容を秘密にしたまま、封をして公証人らに提出
証人不要証人2人以上証人2人以上
特徴手軽・費用が少ない/形式不備で無効になりやすい不備が起きにくく安全/費用と手間内容を秘密にできる
注意:自筆証書遺言は「家庭裁判所の検認」が必要(保管制度利用分を除く)

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、開封・執行の前に家庭裁判所の検認を受ける必要があります。一方、公正証書遺言は検認が不要です。また、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合も検認が不要になります。

遺言の撤回

遺言の撤回(民法1023条)
前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。遺言と、遺言後の生前処分その他の法律行為が抵触する場合も同様。
具体例:あとの遺言が優先

「土地をAに与える」という古い遺言があっても、あとから「土地をBに与える」という遺言をすれば、抵触する部分は撤回されたものとみなされ、あとの遺言(Bに与える)が優先します。遺言は、いつでも自由に撤回できます。

9. 遺留分侵害額請求

遺留分とは、一定の相続人に最低限保障される取り分のことです。遺言で「全財産を他人に」と書かれても、遺留分を持つ相続人は、侵害された分を金銭で支払うよう請求できます(改正後は「遺留分侵害額請求」として、金銭債権の形になりました)。

注意:兄弟姉妹に遺留分はない

遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分がありません。ここは試験で非常によく狙われるポイントなので、確実に覚えましょう。

遺留分の割合

遺留分の総枠(総体的遺留分)は、原則として相続財産の1/2です。ただし、直系尊属のみが相続人の場合は1/3になります。各相続人の遺留分は、この総枠に自分の法定相続分をかけて求めます。

たとえ話:残された家族の“最低保障”

遺言で財産の行き先を自由に決められるとはいえ、残された家族の生活が完全に切り捨てられては酷です。そこで近い家族には「最低限これだけは」という取り分を法律が用意しています。これが遺留分。ただし、関係がやや遠い兄弟姉妹には用意されていないのです。

注意:遺留分侵害額請求にも期間がある

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始の時から10年で消滅します。請求するかどうかは権利者の自由で、放っておくと期間の経過で行使できなくなります。

10. 配偶者居住権

改正で新しく設けられたのが配偶者居住権です。これは、被相続人が亡くなったときその所有する建物に配偶者が住んでいた場合に、配偶者がその建物に住み続けられる権利です。

具体例:自宅か預貯金かで悩まない

夫が亡くなり、遺産が「自宅(2000万円)」と「預貯金(2000万円)」だったとします。従来は、妻が自宅を相続すると預貯金の取り分がほとんど残らず、生活費に困ることがありました。配偶者居住権を使えば、妻は「住む権利」だけを取得し、所有権そのものは子が取得する形にできます。住む権利の評価額は所有権より低いため、妻は自宅に住みながら、預貯金もある程度受け取れるようになります。

配偶者居住権のポイント

配偶者居住権は、遺産分割・遺贈・死因贈与などによって取得します。原則として配偶者が亡くなるまで(終身)存続し、譲渡することはできません。建物の所有者は別の人でも、配偶者はそこに住み続けられる、というしくみです。

演習過去問チャレンジ(○×)

Q1.被相続人に配偶者と子がいる場合、配偶者の法定相続分は3分の2である。

正解は ×。配偶者とが相続人のとき、配偶者の相続分は1/2です。2/3になるのは直系尊属と相続する場合です。

Q2.相続の放棄をした者は、その相続に関して、はじめから相続人とならなかったものとみなされる。

正解は 。相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとして扱われます。よって借金などの債務も承継せず、その子による代襲も起こりません

Q3.被相続人の兄弟姉妹は、相続人となる場合には遺留分を有する。

正解は ×兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分を持つのは配偶者・子・直系尊属です。頻出ポイントです。

Q4.相続の承認・放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内にしなければならない。

正解は 。熟慮期間は原則3か月です。この間に限定承認・放棄をしないと、原則として単純承認したものとみなされます。

Q5.公正証書遺言を執行するには、その開封の前に家庭裁判所の検認を受けなければならない。

正解は ×公正証書遺言は検認が不要です。検認が必要なのは自筆証書遺言・秘密証書遺言です(自筆証書遺言の保管制度利用分も検認不要)。

Q6.前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。

正解は 。遺言はあとの遺言が優先します(1023条)。遺言はいつでも自由に撤回できます。

Q7.被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、その代襲相続は、甥・姪の子やさらに下の世代にも及ぶ。

正解は ×兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りです。それより下の世代には及びません。子の代襲が孫・ひ孫へと続くのとは異なります。

Q8.配偶者居住権は、原則として配偶者が死亡するまで存続し、これを譲渡することはできない。

正解は 。配偶者居住権は原則として終身存続し、譲渡できません。配偶者が自宅に住み続けられるようにするための権利です。

暗記一問一答
常に相続人になるのはだれ?
A. 配偶者(法律上の配偶者)。いれば常に相続人になる。
相続人の順位は?
A. 第1順位=、第2順位=直系尊属、第3順位=兄弟姉妹
配偶者の法定相続分は相手で何分?
A. 子と=1/2、直系尊属と=2/3、兄弟姉妹と=3/4
放棄でも代襲は起こる?
A. 起こらない。欠格・廃除では代襲が起こるが、放棄では起こらない
兄弟姉妹の代襲はどこまで?
A. 甥・姪の一代限り。子の代襲(孫・ひ孫…)と違って下に続かない。
相続の承認・放棄の熟慮期間は?
A. 自分が相続人と知ったときから原則3か月以内。限定承認は全員共同、放棄は単独。
検認が不要な遺言は?
A. 公正証書遺言(および保管制度を使った自筆証書遺言)。
遺言が抵触したらどちらが優先?
A. あとの遺言。抵触部分は前の遺言を撤回したものとみなす(1023条)。
遺留分がないのはだれ?
A. 兄弟姉妹。配偶者・子・直系尊属には遺留分がある。総枠は原則1/2、直系尊属のみは1/3。
配偶者居住権の存続期間と譲渡は?
A. 原則終身譲渡不可

📌 このページのまとめ

  • 配偶者は常に相続人。第1順位=子/第2順位=直系尊属/第3順位=兄弟姉妹
  • 法定相続分は、配偶者と子=1/2直系尊属=2/3兄弟姉妹=3/4
  • 代襲は欠格・廃除では起こり、放棄では起こらない。兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限り
  • 承認・放棄の熟慮期間は3か月。限定承認は全員共同、放棄は単独。何もしないと単純承認
  • 遺言は自筆証書・公正証書・秘密証書。公正証書は検認不要、抵触すればあとの遺言が優先(1023条)
  • 遺留分は兄弟姉妹にはない。総枠は原則1/2(直系尊属のみは1/3)、改正後は金銭での侵害額請求
  • 配偶者居住権は配偶者が自宅に住み続ける権利。原則終身・譲渡不可