📖 このページでわかること
- 「行政行為」とは何か(役所の一方的な決定)と、その成立要素
- 行政行為の完全分類(命令的・形成的・準法律行為的)
- 行政行為が持つ特別な力(公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力)
- 公定力と国家賠償・取消訴訟の関係
- 行政行為につける“おまけの条件”=附款と、その限界
1. 行政行為ってなに?
行政行為とは、ひとことで言えば「役所の決定」です。もう少しきちんと言うと——行政庁が、法律に基づいて、一方的に国民の権利や義務を決める、公権力の行使です。試験では「処分」とほぼ同じ意味で使われます。
ポイントは「一方的」であること。契約は、お互いが「いいですよ」と合意して成立します。でも行政行為は、国民の同意がなくても、役所が一方的に「あなたは○○しなさい」「あなたに○○を許可します」と決めてしまえる点が大きく違います。
行政行為の4つの特徴
定義を分解すると、行政行為には次の特徴があります。
- 行政庁が行うこと(私人や立法・司法ではない)
- 法律に基づくこと(法律による行政の原理)
- 一方的・権力的であること(相手の同意は不要)
- 具体的に国民の権利義務を決めること(特定の相手・事案に向けた決定)
この「具体的」という点から、不特定多数を対象とするルールづくり(一般的・抽象的な規範の定立)は、原則として行政行為ではないとされます。たとえば一般的な基準を定めるだけの行為は、特定の人の権利義務を直接動かすものではないからです。
あなたが運転免許を申請すると、公安委員会(行政庁)が試験の結果を見て「免許を与える」と決定します。これが行政行為です。あなたとお店が「売ります・買います」と合意する契約とは違い、役所が一方的に「与える・与えない」を決めるのがポイント。しかも、いったん出た免許には、後で見るような特別な力がそなわっています。
2. 行政行為の種類——完全分類
行政行為は、まず「行政庁の意思表示で効果が決まるもの(法律行為的行政行為)」と「ある事実の認識を示すと、法律が効果を結びつけるもの(準法律行為的行政行為)」に大きく分かれます。さらに法律行為的行政行為は命令的と形成的に分かれます。全体像を表でつかみましょう。
| 大分類 | 中分類 | 種類 |
|---|---|---|
| 法律行為的 行政行為 | 命令的行為 (義務に関わる) | 下命・禁止・許可・免除 |
| 形成的行為 (権利・地位を生む) | 特許・認可・代理 | |
| 準法律行為的 行政行為 | 意思表示ではなく 判断・認識を示す | 確認・公証・通知・受理 |
① 命令的行為——「するな/しろ」の世界
国民が本来は自由にできることについて、義務を課したり、その義務を外したりする行為です。
| 種類 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 下命(かめい) | 「○○しなさい」と作為の義務を課す | 違反建築の除却命令・納税の命令 |
| 禁止 | 「○○してはいけない」と不作為の義務を課す | 営業の停止命令・道路の通行禁止 |
| 許可 | いったん禁止されていた行為を解除し、できるようにする | 運転免許・飲食店の営業許可 |
| 免除 | すでに課されている義務を免じる | 納税の猶予・就学義務の猶予 |
② 形成的行為——「権利や地位を生む」世界
国民が本来は持っていない権利や法的な地位を、新しく与えたり、変えたりする行為です。
| 種類 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 特許 | 本来は持っていない特別な権利・地位を新しく与える | 道路の占用許可・公務員の任命 |
| 認可 | 第三者の契約などの法律行為を補充し、効力を完成させる | 農地の権利移動の許可 |
| 代理 | 本来は本人がすべきことを、行政が代わって行い、本人がしたのと同じ効果を生む | 当事者間の協議に代わる裁定など |
③ 準法律行為的行政行為——「事実を示す」世界
行政庁の意思ではなく、ある事実の判断や認識を示すと、その効果を法律が結びつけるタイプです。意思表示ではないので、後で見る附款をつけられないのが特徴です。
| 種類 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 確認 | 事実や法律関係の存否を公の権威で確定する | 当選人の決定・建築確認 |
| 公証 | 事実や法律関係を公に証明する | 選挙人名簿への登録・各種登録・証明書の交付 |
| 通知 | 特定の事項を知らせる(一定の法的効果を伴う) | 納税の督促・代執行の戒告 |
| 受理 | 他人の行為を有効なものとして受け取る | 各種届出の受理 |
ここはよく混同されます。許可=本来は自由だが、いったん禁止された行為を解除してできるようにする(運転免許)。特許=本来は持っていない特別な権利を新しく与える(道路占用許可)。認可=私人どうしの契約などに行政がお墨つきを与えて効力を完成させる(農地の権利移動の許可)。日常語の「特許(発明)」とは無関係です。
許可が必要な行為を、許可を受けずにやってしまった場合——その行為自体は有効なことがあり、ただ罰せられたりします(例:無免許運転でも運転という事実は成立する)。一方、認可が必要な契約を、認可を受けずに結んだ場合——その契約は効力が生じないのが原則です。認可は契約の効力を完成させる“最後のピース”だからです。
3. 【最重要】行政行為の特別な効力
ここが行政行為のいちばんの山場です。役所の決定には、ふつうの契約にはない4つの特別な力があります。「役所の決定は強い」というイメージで押さえましょう。
① 公定力——とりあえず有効なものとして扱われる
たとえ行政行為に間違い(違法)があっても、権限のある機関が取り消すまでは、いちおう有効なものとして通用する力です。「文句があるなら、まず正式な手続き(取消訴訟など)で取り消してもらいなさい」というルールで、国民が勝手に「これは違法だから無効だ」と無視することはできません。
この公定力があるため、行政行為の効力を否定したいなら取消訴訟で争うしかないとされます。これを取消訴訟の排他的管轄といいます。「公定力=取消訴訟の排他的管轄」とセットで覚えましょう。
違法な行政行為で損害を受けたとき、国にお金を払ってもらう国家賠償の請求をするには、あらかじめ取消訴訟でその行為を取り消しておく必要はありません。国家賠償の請求は、行政行為の効力を否定するものではなく、損害の賠償を求めるものだからです。つまり公定力は国家賠償請求を妨げない——これは超頻出です。
キズが重大かつ明白で行政行為が無効な場合には、そもそも公定力は生じません。無効なら最初から効力がないので、取消しを待つまでもなく、誰でもその無効を主張できます(詳しくは次回)。
② 不可争力(ふかそうりょく)——一定期間が過ぎると争えない
行政行為に不服があっても、決められた期間(出訴期間など)を過ぎると、国民の側からはもう争えなくなる力です。「不可争力」=争うことが不可能になる、と覚えましょう。法律関係を早く安定させるためのものです。ただし無効な行政行為には不可争力は働かず、いつでも無効を主張できます。
③ 不可変更力——役所の側もやり直せない
不服申立てに対する裁決など、争いを裁断する性質の一定の行政行為については、役所の側からも勝手に変更できなくなる力です。②が「国民が争えない」のに対し、③は「役所も変えられない」。向きが逆な点に注意しましょう。すべての行政行為に当然に生じるわけではなく、争いを裁断するタイプの行為に認められる点もポイントです。
④ 自力執行力(執行力)——裁判なしで強制できる
国民が義務を守らないとき、役所は裁判所の判決を待たずに、自分の力で強制的に義務を実現できる場合があります(例:税金の滞納処分)。ふつうの人どうしなら、お金を返してもらうにも裁判が必要ですが、役所はそれを飛ばせる場合があるのです。ただし、これには必ず法律の根拠が必要です(侵害行政だから法律の留保が働く)。
| 効力 | ひとことで | 誰を縛る?/ポイント |
|---|---|---|
| 公定力 | 取り消されるまで有効に通用 | 国民(勝手に無視できない)。国賠は妨げない |
| 不可争力 | 期間が過ぎると争えない | 国民(もう文句を言えない) |
| 不可変更力 | 役所も変更できない | 行政庁(裁断的な行為で生じる) |
| 自力執行力 | 裁判なしで強制できる | 国民(必ず法律の根拠が必要) |
不可争力=国民が(期間切れで)もう争えない。
不可変更力=役所が自分で変えられない。
「誰が動けなくなるのか」が逆になっています。試験ではここがよく狙われます。
違法な処分を受けた人が損害賠償を求める場面を、ケガの治療代の請求にたとえましょう。「処分を取り消す」のは、ケガの原因になった看板を撤去するようなもの。「国家賠償」は、すでに負ったケガの治療代を払ってもらうようなもの。治療代をもらうのに、先に看板を撤去しておく必要はありませんよね。だから国賠は、取消しを先にしなくてもよいのです。
4. 附款(ふかん)——行政行為につける“おまけ”
行政行為には、本体の決定に加えて付け足しの条件をつけられることがあります。これを附款といいます。附款は行政庁の意思に基づいて付けるものなので、原則として法律行為的行政行為にだけ付けられ、準法律行為的行政行為には付けられないのが基本です。代表的なものは次の4つです。
| 附款 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 条件 | 将来起こるか不確実な事実に、効力の発生・消滅をかける | 「工事が完成したら効力が生じる」(停止条件) |
| 期限 | 将来確実に来る事実に、効力の発生・消滅をかける | 「○年○月○日まで有効」 |
| 負担 | 許可などの主たる意思表示に加え、相手に特別な義務を課す | 「営業許可を与えるが、ゴミの分別を守ること」 |
| 撤回権の留保 | あらかじめ「あとで撤回できる」と留保しておく | 「違反があれば許可を撤回することがある」 |
「雨が降ったらイベント中止」——雨が降るかは不確実なので条件。
「3月31日にイベント終了」——その日は必ず来るので期限。
「確実に来るかどうか」が、条件と期限の分かれ目です。
条件は、その事実が起こるまで(または起こると)本体の効力そのものが動くのがポイント。これに対し負担は、本体の許可はすでに効力を生じており、それに加えて義務が課されるだけです。負担に違反しても、許可が当然に消えるわけではなく、別途、撤回などの問題になります。
附款の限界——なんでも付けられるわけではない
附款は便利ですが、自由気ままに付けられるわけではありません。次のような限界があります。
- 法律が認めている場合か、または行政庁に裁量が認められる場合に付けられる。裁量がまったくない(覊束的な)行為には、原則として付けられません。
- 付ける場合も、法律の目的の範囲内でなければならず、比例原則などに反する過大な附款は許されません(必要な限度を超えてはいけない)。
- 準法律行為的行政行為には、原則として附款を付けられない(意思表示ではないため)。
Q1.行政行為に違法な点があっても、権限のある機関によって取り消されるまでは、一応有効なものとして取り扱われる。これを公定力という。
正解は 〇。公定力の説明として正しい記述です。違法でも、取り消されるまでは有効に通用し、国民が勝手に無視することはできません。
Q2.違法な行政行為によって損害を受けた者が国家賠償を請求するには、あらかじめ取消訴訟でその行政行為を取り消しておかなければならない。
正解は ×。公定力は国家賠償請求を妨げません。国賠は行政行為の効力を否定するものではなく損害の賠償を求めるものなので、先に取り消しておく必要はありません。
Q3.一定期間が経過すると国民の側から行政行為を争えなくなる効力を、不可変更力という。
正解は ×。国民の側から争えなくなるのは不可争力です。不可変更力は、役所の側が自分で変更できなくなる効力で、向きが逆です。
Q4.運転免許のように、本来は誰もが自由にできない特別な権利を新たに設定して与える行政行為を「許可」という。
正解は ×。運転免許は許可ですが、その説明は誤りです。許可は「本来は自由→いったん禁止された行為を解除して、できるようにする」もの。新たに特別な権利を与えるのは「特許」です。
Q5.認可とは、私人間の契約などの法律行為を補充して、その効力を完成させる行政行為である。
正解は 〇。認可の正しい説明です。認可を受けずに行った場合、その契約は原則として効力を生じません。
Q6.「○年○月○日まで有効とする」という附款は、将来到来が不確実な事実に効力をかけるものであるから「条件」である。
正解は ×。期日は必ず到来するので、これは期限です。到来が不確実な事実にかけるのが「条件」です。
Q7.準法律行為的行政行為にも、行政庁は自由に条件や負担などの附款を付すことができる。
正解は ×。附款は行政庁の意思に基づくもので、原則として準法律行為的行政行為には付けられません(確認・公証などは意思表示ではないため)。
行政行為をひとことで言うと?
命令的行為の4種類は?
形成的行為の3種類は?
準法律行為的行政行為の4種類は?
「許可」と「特許」の違いは?
公定力とは?取消訴訟との関係は?
公定力は国家賠償請求を妨げる?
不可争力と不可変更力の違いは?
附款の4つの代表例は?
条件と期限の違いは?
📌 このページのまとめ
- 行政行為=行政庁が一方的・具体的に国民の権利義務を決める公権力の行使(処分)
- 種類は命令的(下命・禁止・許可・免除)/形成的(特許・認可・代理)/準法律行為的(確認・公証・通知・受理)
- 許可・特許・認可の違い、認可は契約の効力を完成させる点が頻出
- 特別な効力は公定力・不可争力・不可変更力・自力執行力の4つ
- 公定力=取消訴訟の排他的管轄。ただし国家賠償は妨げず、無効には及ばない
- 不可争力=国民が争えない/不可変更力=役所が変えられない(向きが逆)
- 附款=条件・期限・負担・撤回権の留保。準法律行為的行政行為には原則付けられない