📖 このページでわかること
- 権力分立とは何か、なぜ権力を3つに分けるのか
- 国会のしくみ(最高機関・唯一の立法機関・二院制・衆議院の優越・会期・議員の特権)
- 内閣のしくみ(議院内閣制・連帯責任・総辞職・衆議院の解散)
- 裁判所(司法権の範囲と限界・統治行為・部分社会・違憲審査制・裁判官の独立)
- 財政(租税法律主義・予算・決算)と地方自治の基本
1. 権力分立 ── 権力を分けて抑制し合う
国の大きな仕事は、ざっくり3つに分けられます。ルールを作る・ルールを実行する・もめごとを裁く。日本国憲法は、これらを別々の機関に担当させ、おたがいに見張り合わせています。
立法権(ルールを作る)→ 国会
行政権(ルールを実行する)→ 内閣
司法権(もめごとを裁く)→ 裁判所
もし1人の人が「ルールを作り、実行し、裁く」すべてを握ったら、その人の都合のいいように国が動いてしまいます。そこで仕事を3つに分け、おたがいに見張り合わせる。1つが暴走しそうになったら、ほかの2つがブレーキをかける——これが権力分立のねらいです。目的は、最終的に国民の人権を守ることにあります。
2. 国会 ── ルールを作る場所
国会は、国民から選ばれた代表(国会議員)が集まり、法律を作る機関です。憲法は国会に、特別な2つの肩書きを与えています。
国権の最高機関=主権者である国民が選んだ、いちばん国民に近い機関
唯一の立法機関=法律を作れるのは、原則として国会だけ
「国権の最高機関」とは、国会が他の機関に命令できる“いちばん偉い上司”という意味ではありません。主権者である国民に最も近い、重要な機関だと敬意をこめて述べたものと理解するのが一般的です(政治的美称説)。最高機関だから内閣や裁判所に上下命令できる、という記述は誤りです。
二院制と衆議院の優越
日本の国会は、衆議院と参議院という2つの議院からなる二院制です。2つの院で二重にチェックすることで、慎重に話し合えるようにしています。ただし、2つの院の意見が食い違うと物事が決まりません。そこで、より任期が短く解散もあって民意を反映しやすい衆議院に、いくつかの場面で優越を認めています。
大事な書類を1人だけでなく2人で確認すると、見落としが減りますよね。二院制も同じで、2つの院がそれぞれの目で法律案をチェックします。とはいえ2人の意見が割れたままでは仕事が進まないので、より国民に近い衆議院の判断を優先する場面を用意しているのです。
| 場面 | 衆議院の優越の内容 |
|---|---|
| 法律案 | 両院で異なるとき、衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立 |
| 予算・条約の承認・内閣総理大臣の指名 | 両院協議会でも一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる |
| 内閣不信任決議 | 衆議院だけが行える |
会期と議員の特権
国会は一年中開いているわけではなく、活動する期間(会期)が区切られています。会期には、毎年定期的に開かれる常会(通常国会)、必要に応じて開かれる臨時会、衆議院の解散・総選挙後に開かれる特別会があります。
また、国会議員が安心して職務を果たせるよう、憲法はいくつかの特権を与えています。
・不逮捕特権=会期中は、原則として逮捕されない(例外あり)
・免責特権=議院で行った演説・討論・表決について、院外で法的な責任を問われない
・歳費を受ける権利=国から相当額の報酬を受け取る
これらは議員個人を特別扱いするためではなく、議会の自由な活動を守るためのものです。
3. 内閣 ── ルールを実行する
内閣は、国会が作った法律にもとづいて、実際に国の仕事を進める(行政)機関です。内閣のトップが内閣総理大臣で、各分野を担当する国務大臣とともに仕事をします。総理大臣は国会議員の中から指名され、国務大臣の過半数は国会議員から選ばれなければなりません。また、内閣の構成員は文民でなければならない(文民統制)とされています。
議院内閣制と連帯責任
日本では、内閣は国会の信頼にもとづいて成り立ちます。これを議院内閣制といいます。内閣は、国会に対して連帯して責任を負います。
内閣は、大臣ひとりひとりがバラバラに責任を負うのではなく、内閣全体として一つにまとまって(連帯して)国会に責任を負います。チームとして国会に向き合う、とイメージしましょう。
総辞職と衆議院の解散
内閣と国会(とくに衆議院)は、おたがいにチェックし合う関係にあります。衆議院が内閣に「もう信頼できない」と内閣不信任決議をすると、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければなりません。
次の場合、内閣は必ず総辞職します。
・衆議院で不信任決議が可決され(または信任決議が否決され)、10日以内に衆議院を解散しなかったとき
・内閣総理大臣が欠けたとき
・衆議院議員総選挙の後、初めて国会が召集されたとき
「不信任→解散か総辞職」「総選挙後の召集→総辞職」をセットで覚えましょう。
チームのリーダーが「もう君たちには任せられない」と言われたら、メンバーを入れ替えて出直す(総辞職)か、みんなに選び直してもらう(解散→総選挙)か、どちらかを選びます。内閣と衆議院の関係も、これと同じ緊張感の上に成り立っています。
4. 裁判所 ── もめごとを裁き、憲法を守る
裁判所は、争いごとを法律にもとづいて解決する司法権を担当します。司法権とは、具体的な法律上の争いについて、法を適用して判断する作用です。だから、現実の争いがない「ただの法律論」や「学問上の疑問」には、裁判所は判断を下しません。
司法権の限界
裁判所が判断できる事柄には、いくつかの限界があります。試験頻出なので、代表的なものをおさえましょう。
| 限界の種類 | 内容 |
|---|---|
| 統治行為 | 高度に政治的な国家の行為は、裁判所の審査になじまないとされる |
| 部分社会の法理 | 自律的な団体(大学・地方議会など)の内部問題は、一般市民法秩序と直接かかわらない限り、司法審査が及ばないことがある |
| 議院・国会の自律 | 議院内部の手続などは、各議院の自律にゆだねられる |
条約や国の重要な政治的決定など、高度に政治的な問題については、たとえ法律上の争いの形をとっていても、裁判所が判断するのにふさわしくない(司法審査の対象外)とされることがあります。これを統治行為論といいます。最終的な責任は、選挙で選ばれた政治部門と国民の判断にゆだねる、という考え方です。
大学が単位を認定するかどうかや、地方議会が議員に与える内部的な処分などは、その団体の自治にゆだねるべき内部の問題であることが多く、一般市民としての権利に直接かかわらない限り、裁判所は立ち入らない、と整理されます。ただし「除名」など、市民としての地位に大きくかかわる重大な処分は、司法審査の対象になりうると考えられています。
違憲審査制(81条)=憲法の番人
憲法は、裁判所にもう一つ重要な役割を与えています。それが違憲審査制です。
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
日本の違憲審査は、具体的な事件の裁判の中で、その解決に必要な範囲で、適用される法律などが憲法に違反しないかを判断するしくみと理解されています。これを付随的違憲審査制といいます。事件と関係なく、法律そのものの合憲性だけを抽象的に審査する制度ではない、という点が重要です。なお違憲審査の権限は最高裁だけでなく下級裁判所も持つと考えられています(最高裁が終審)。
「裁判所は、具体的な事件がなくても、法律が憲法に合うかを単独で審査できる」は誤りです。日本は付随的審査制で、あくまで具体的な事件の解決に必要な範囲で判断します。
裁判官の独立
裁判が公正であるためには、裁判官が外からの圧力に左右されてはいけません。そこで憲法は、裁判官は、自分の良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されると定めています(裁判官の独立)。また、裁判官の身分も手厚く保障され、原則として簡単には罷免されません。
5. 三権の役割をまとめて整理
| 機関 | 担当する権力 | おもな役割・キーワード |
|---|---|---|
| 国会 | 立法 | 国権の最高機関・唯一の立法機関・二院制・衆議院の優越 |
| 内閣 | 行政 | 議院内閣制・連帯責任・総辞職/解散 |
| 裁判所 | 司法 | 司法権の限界・違憲審査制(付随的)・裁判官の独立 |
6. 財政 ── お金は国民の代表が握る
国がお金を集め、使うことには、国民生活への大きな影響があります。そこで憲法は、財政を国会(国民の代表)のコントロールのもとに置く原則を定めています(財政民主主義)。
新しく税金を課したり、税のしくみを変えたりするには、必ず法律(または法律の定める条件)による必要があります。これを租税法律主義といいます。国民の代表である国会の同意なしに、勝手に課税してはならない、という歯止めです。
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
このほか、国のお金の使い道を事前に定める予算は、内閣が作成して国会に提出し、国会の議決を受けます。使った後の結果である決算は、会計検査院が検査したうえで国会に提出されます。「お金の入口(課税)も、計画(予算)も、結果(決算)も、すべて国会が関わる」と押さえましょう。
7. 地方自治 ── 地域のことは地域で
国だけでなく、都道府県や市町村といった地方公共団体にも、自分たちのことを自分たちで決めるしくみがあります。これが地方自治です。憲法は、地方自治の基本的なあり方を「地方自治の本旨」という言葉で示しています。
住民自治=その地域のことは、住民の意思にもとづいて決める(民主主義の要素)
団体自治=地方公共団体が、国から独立して自分の責任で行政を行う(自由主義・分権の要素)
この2つがそろって、はじめて地方自治が成り立ちます。
地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定できます。条例は、地域の実情に合わせて住民の代表(地方議会)が定めるルールです。なお、地方公共団体の長(知事・市町村長)と議会の議員は、いずれも住民が直接選挙で選ぶ点も特徴です(国の議院内閣制とは違うしくみです)。
同じ国でも、雪国と南国では暮らしの悩みが違います。だから、こまかいことはその地域の住民が自分たちで決めるほうがうまくいく。地方自治は、この「現場に近いところで決める」という発想と、「国に勝手にさせない」という権力分立の精神が合わさったしくみなのです。
Q1.国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関であるとされている。
正解は 〇。国会は国権の最高機関であり唯一の立法機関です。ただし「最高機関」は他機関に命令できる意味ではない点に注意。
Q2.内閣は、各国務大臣がそれぞれ単独で国会に責任を負い、内閣全体としての責任は問われない。
正解は ×。内閣は連帯して国会に責任を負います(連帯責任)。バラバラではなく、内閣全体としてチームで責任を負います。
Q3.衆議院で内閣不信任決議が可決されたとき、内閣は10日以内に衆議院を解散しなければ総辞職しなければならない。
正解は 〇。不信任決議が可決されると、内閣は10日以内に解散するか、総辞職します。「解散か総辞職か」をセットで。
Q4.日本の違憲審査制は、具体的な事件がなくても、法律そのものの合憲性を抽象的に審査できる制度である。
正解は ×。日本は付随的違憲審査制で、具体的な事件の解決に必要な範囲で判断します。抽象的審査ではありません。
Q5.高度に政治的な国家の行為については、裁判所の審査になじまないとする統治行為論という考え方がある。
正解は 〇。統治行為論は、高度に政治的な問題を司法審査の対象外とする、司法権の限界の一つです。
Q6.新たに租税を課したり変更したりするには、法律(または法律の定める条件)によらなければならない。
正解は 〇。これが租税法律主義(84条)です。国会の同意なしに勝手に課税することはできません。
Q7.裁判官は、自分の良心ではなく、内閣や国会の指示に従って裁判をしなければならない。
正解は ×。裁判官は良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されます(裁判官の独立)。外部の指示には従いません。
Q8.地方自治の本旨は、住民自治と団体自治の2つの要素からなるとされている。
正解は 〇。住民自治(住民の意思で決める)と団体自治(国から独立して行う)の2本柱です。
三権分立の3つの権力と担当機関は?
国会の2つの肩書きは?「最高機関」の意味は?
衆議院の優越が認められる代表的な場面は?
会期の3種類は?
国会議員の主な特権は?
内閣が必ず総辞職する場面は?
違憲審査制の性格は?権限を持つ裁判所は?
司法権の限界の代表例は?
租税法律主義とは?何条?
地方自治の本旨の2つの柱は?
📌 このページのまとめ
- 権力分立=立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)で権力を分け、暴走を防ぐ
- 国会は国権の最高機関・唯一の立法機関で二院制。衆議院の優越あり
- 国会議員には不逮捕特権・免責特権・歳費の特権
- 内閣は議院内閣制のもと国会に連帯責任。不信任なら解散か総辞職
- 裁判所には司法権の限界(統治行為・部分社会)がある
- 違憲審査は付随的審査制(81条)。裁判官は独立して職権を行う
- 財政は租税法律主義(84条)・予算・決算で国会がコントロール
- 地方自治の本旨=住民自治+団体自治。条例は法律の範囲内で制定