第4章 商法・会社法 入門〜基本 株式会社の基礎

会社のしくみ

株式会社って何者? そのしくみと設立の流れ。

📖 このページでわかること

  1. 会社の種類と、出資者(社員)の責任のちがい
  2. 株式会社の2大特徴(株主の有限責任・所有と経営の分離)
  3. 会社をつくる流れ(定款の絶対的記載事項・出資・設立登記)
  4. 発起設立と募集設立のちがい、発起人の責任・仮装払込
  5. 資本金と、資本にまつわる原則
前回は商売の基本ルールを見ました。今回は、商売の主役である「会社」、とくに株式会社のしくみです。むずかしく考えず、「みんなでお金を出し合って事業をする箱」とイメージしてください。設立のところは試験でよく問われるので、手順と責任をていねいに見ていきます。

1. 会社の種類と「社員」の責任

会社法が定める会社は、大きく株式会社持分会社の2グループに分かれます。持分会社の中には、合名会社・合資会社・合同会社があります。

ここで大事なのが、会社にお金を出した人(会社法では出資者を社員と呼びます。従業員のことではありません)の責任です。

会社の種類社員(出資者)の責任特徴
株式会社株主は有限責任のみ株式を発行して広く出資を集める
合名会社社員全員が無限責任信頼関係の強い少人数むけ
合資会社無限責任社員+有限責任社員2種類の社員で構成
合同会社社員全員が有限責任持分会社だが責任は有限(LLC)
ひっかけ注意:合同会社は「有限責任」

持分会社=無限責任、と思い込ませる出題があります。合同会社は持分会社ですが、社員全員が有限責任です。「持分会社=全員無限責任」ではない点に注意しましょう。

これだけ覚える:会社の2グループ

株式会社株式を発行して広くお金を集める会社。
持分会社=出資した人どうしの信頼関係を大事にする会社(合名・合資・合同)。試験の主役はやはり株式会社です。

2. 株式会社の2大特徴

株式会社のしくみを支える、とても大事な2つの特徴があります。

① 株主は「有限責任」

株式会社にお金を出した人を株主といいます。株主は、出資したお金がなくなる以上の責任は負いません。これを株主有限責任といいます。会社が大きな借金を抱えてつぶれても、株主は出したお金をあきらめれば済み、自分の財産から会社の借金を肩代わりする必要はありません。

会社法104条:株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする(株主有限責任の原則)。
たとえ話:コンサートの「前売りチケット」

5,000円のチケットを買ってコンサートに出資したとします。もし公演が中止になっても、損をするのは払った5,000円まで。「中止の損を追加で払え」とは言われませんよね。株主の有限責任もこれと同じ。出したお金が上限のリスクだから、みんな安心して出資できるのです。

② 所有と経営の分離

株主は会社の持ち主(オーナー)ですが、必ずしも自分で会社を経営するわけではありません。実際の経営は、取締役という経営の専門家に任せます。これを所有と経営の分離といいます。

たとえ話:オーナーと雇われ店長

お店にお金を出した「オーナー」と、実際にお店をまわす「店長」が別の人、ということはよくありますよね。オーナー(株主)はお金を出して見守る人、店長(取締役)は実際に経営する人。役割を分けることで、お金はあるが経営は苦手な人も出資できるのです。

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3. 会社をつくる流れ(設立)

株式会社は、思いついたその日にできるわけではありません。決められた手順を踏んで、最後に登記をすることで、はじめて会社が誕生します。

順番やることポイント
① 定款の作成会社の基本ルールを書面(電子も可)で定める会社の「憲法」。原則公証人の認証を受ける
② 出資の履行株式を引き受けた人がお金(財産)を払い込む会社の元手を集める
③ 機関の具備設立時取締役などを選ぶ会社を動かす人を決める
④ 設立登記会社の情報を登記する登記で会社が成立する
最重要:会社は「登記」で生まれる

株式会社は、本店所在地で設立の登記をしたときに成立します。定款を作っただけ、お金を集めただけでは、まだ会社は誕生していません。登記がゴールと覚えましょう。

会社法49条:株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

定款の「絶対的記載事項」

定款には必ず書かなければならない事項があります。これを絶対的記載事項といい、1つでも欠けると定款全体が無効になります。試験頻出です。

絶対的記載事項意味
目的会社が何の事業をするか
商号会社の名前
本店の所在地会社の住所
設立に際して出資される財産の価額または最低額集める元手の規模
発起人の氏名・名称および住所言い出しっぺの情報
ひっかけ注意:「資本金の額」は絶対的記載事項ではない

定款に必ず書くのは「出資される財産の価額または最低額」であって、具体的な資本金の額そのものは絶対的記載事項ではありません。混同しやすいので注意しましょう。なお「現物出資」など一部の事項は、定款に書かないと効力が生じない変態設立事項(相対的記載事項)です。

4. 発起設立と募集設立

株式会社の設立には、出資者の集め方で2つの方法があります。

発起設立募集設立
株式を引き受けるのは発起人だけ発起人+外部から募集した人
設立時取締役などの選任発起人の議決権の過半数で決定創立総会で決定
創立総会不要必要(引受人が集まる会)
手続きシンプル株主を募るぶん手間が多い

発起人とは、会社をつくることを企画し、定款に署名(記名押印)して設立手続きを進める言い出しっぺのことです。発起設立は発起人だけで、募集設立は外部からも株主を集める、と区別しましょう。募集設立では引受人が集まる創立総会が開かれるのが大きな違いです。

設立中の会社と、発起人の責任

登記前のまだ会社になっていない段階を設立中の会社と呼びます。発起人はこの段階で会社の「卵」を育てる役割を担い、その分だけ重い責任を負います。

具体例:発起人が負う責任

たとえば、出資された財産(現物出資など)の実際の価額が定款の価額に著しく不足していた場合、発起人らはその不足額を支払う責任(財産価額てん補責任)を負うことがあります。また、任務を怠って会社に損害を与えれば、その損害を賠償する責任を負います。「言い出しっぺは、会社の元手をきちんと整える責任がある」というイメージです。

仮装払込(見せ金・預合い)

出資のお金を本当には用意していないのに、用意したように見せかけることを仮装払込といいます。代表例が預合い(あずけあい)見せ金です。

注意:仮装払込は無効・無責任ではない

見せ金などで払込みをごまかしても、出資が本当にあったことにはなりません。出資を仮装した発起人らは、払い込むべきだった金額を実際に支払う責任を負います。「形だけ整えればよい」は通用しない、という発想です。とくに預合いは罰則の対象にもなります。

5. 資本金と「資本の原則」

資本金とは、ざっくり言えば株主が出資して会社の元手になったお金(の基準額)のことです。会社の体力を示す目安の一つで、登記されて外からも分かります。

会社の財産は、株主が有限責任である分、会社の借金を返すための最後のよりどころになります。そこで資本金には、債権者を守るための原則があります。

原則意味
資本充実・維持の原則資本金に見合う財産が実際に確保・維持されるべき(仮装払込が許されない理由)
資本不変の原則資本金を勝手に減らせない(減資には所定の手続きが必要)
注意:資本金=今ある現金、ではない

資本金は「会社の元手として計上された金額」であって、その金額の現金が常に金庫にあるという意味ではありません。集めたお金は事業のために使われていきます。「資本金=いつでも使える貯金」という誤解に注意しましょう。なお、現在の会社法では最低資本金の制度はなく、資本金1円でも株式会社をつくれます。

演習過去問チャレンジ(○×)

Q1.株式会社の株主は、会社が倒産しても、原則として出資した金額を超えて会社の債務を負担することはない。

正解は 。株主は有限責任。出資額(引受価額)が責任の上限です。

Q2.合同会社の社員は、全員が会社の債務について無限責任を負う。

正解は ×合同会社の社員は全員が有限責任です。無限責任社員がいるのは合名会社・合資会社です。

Q3.株式会社は、定款を作成した時点で成立し、法律上の会社として活動できるようになる。

正解は ×。株式会社は本店所在地での設立登記によって成立します。定款作成や出資だけでは成立しません。

Q4.定款の絶対的記載事項を一つでも欠くと、その定款は無効となる。

正解は 。目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額(最低額)・発起人の情報などの絶対的記載事項を欠くと定款全体が無効になります。

Q5.発起設立では、設立に際して創立総会を開かなければならない。

正解は ×創立総会が開かれるのは募集設立です。発起設立では創立総会は不要です。

Q6.見せ金などで出資を仮装した発起人は、形だけ払込みを整えれば、その金額を支払う責任を負わない。

正解は ×。出資を仮装した発起人は、仮装した金額を実際に支払う責任を負います。形だけでは済みません。

Q7.現在の会社法では、株式会社を設立するには最低でも一定額の資本金が必要である。

正解は ×。現在の会社法に最低資本金制度はなく、資本金1円でも株式会社を設立できます。

暗記一問一答
会社の4類型は?
A. 株式会社と持分会社(合名・合資・合同)。
無限責任社員がいる会社は?
A. 合名会社(全員無限)と合資会社(無限+有限)。
合同会社の社員の責任は?
A. 全員有限責任(持分会社だが有限)。
株主有限責任の意味は?
A. 責任は株式の引受価額が限度。それ以上は会社の借金を負わない。
株式会社はいつ成立する?
A. 本店所在地で設立登記をしたとき。定款作成・出資だけでは成立しない。
定款の絶対的記載事項は?
A. 目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額(最低額)・発起人の情報。欠けると無効。
発起設立と募集設立の違いは?
A. 発起設立は発起人だけ・創立総会不要、募集設立は外部からも募集・創立総会あり
仮装払込(見せ金)をした発起人の責任は?
A. 仮装した金額を実際に支払う責任を負う。預合いには罰則も。
資本維持・資本不変の原則とは?
A. 資本に見合う財産を確保・維持し、資本金を勝手に減らせない
最低資本金は必要?
A. 不要。現行会社法に最低資本金制度はない(1円でも可)。

📌 このページのまとめ

  • 会社は株式会社・合名・合資・合同。無限責任は合名(全員)・合資、合同は全員有限
  • 株式会社の2大特徴は株主有限責任所有と経営の分離
  • 設立は定款→出資→機関→登記。会社は本店所在地の設立登記で成立
  • 定款の絶対的記載事項を欠くと無効(目的・商号・本店・出資の価額・発起人)
  • 発起設立=発起人だけ・創立総会不要/募集設立=外部募集・創立総会あり
  • 仮装払込でも責任は消えず、資本維持・資本不変の原則が働く。最低資本金はなし